2014年07月28日

ヘモグロビンA1cとは?

●ヘモグロビンA1cとは?

ヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c; HbA1c)は、グリコヘモグロビンのうち、ヘモグロビンのβ鎖のN末端にグルコースが結合した糖化蛋白質である。

「糖化ヘモグロビン」と呼ばれることもある。



●ヘモグロビンA1cの概要

成人の血中ヘモグロビンの組成は、約90%がヘモグロビンA0(α鎖2本とβ鎖2本からなる成人型ヘモグロビン)、約7%がヘモグロビンA1(ヘモグロビンA0のβ鎖にグルコースやリン酸化糖などが結合したもの)、約2%がヘモグロビンA2(α鎖2本とδ鎖2本)、約0.5%がヘモグロビンF(α鎖2本とγ鎖2本からなる胎児型ヘモグロビン)である。

このうちヘモグロビンA1は、β鎖に結合した糖の種類によってさらにA1a1、A1a、A1b、A1cなどに分画されるが、最も多いものがA1c分画であり、総ヘモグロビンの約4%を占める。



ヘモグロビンへのグルコースの結合は、ヘモグロビンのアミノ基の窒素が持つ非共有電子対がグルコースのアルデヒド基の炭素を求核攻撃することにより進行する。

このうち、成人のヘモグロビン(ヘモグロビンA)におけるβ鎖N末端のバリンとグルコースが結合したものがヘモグロビンA1cであり、安定で糖化ヘモグロビンの中でも大きな割合を占めるため、糖化ヘモグロビンの指標として用いられる。

また、この反応は非酵素的におこるため、ヘモグロビンA1cのヘモグロビンに対する割合は血中グルコース濃度(血糖値)に依存し、糖尿病治療における血糖コントロールの指標として用いられる。

ヘモグロビンの生体内における平均寿命は約120日であり、ヘモグロビンA1cのヘモグロビンに対する割合は、過去1ヶ月〜2ヶ月の血糖値の指標となる。




●ヘモグロビンA1cの日本での問題点

日本では日本糖尿病学会(Japan Diabetes Society; JDS)により、検査の国内標準化が行われていた。

しかし、国際的には米国のNational Glycohemoglobin Standardization Program; NGSP が標準化に採用されており、日本独自のものとなっていた。

2012年4月より日本でも臨床検査標準化についてはNGSPを用いることが決定し、臨床検査に用いられている。

しかし、特定健診・特定保健指導では、JDSを継続使用することとなっており、ダブル・スタンダードとなっている。


HbA1C(%, NGSP)=HbA1C(%, JDS) X 1.02 + 0.25HbA1C(JDS) が 5.0% 〜 9.9% の間であれば、0.4% を加えると、NGSP値に換算できる。






●糖尿病の治療における血糖コントロール目標値

2013年5月に開催された第56回日本糖尿病学会年次学術集会にて、“熊本宣言2013”が採択された。

この中で学会は、以下の目標値を定めている。

1.血糖正常化を目指すときの目標値(正常値):6.0%未満(NGSP 以下同じ)

2.合併症を予防するための治療目標値:7.0%未満

3.有害事象等により治療強化が困難な場合の目標値:8.0%未満


このうち 3.は“治療強化が困難な際に限り8.0%未満”とされており、基本的な治療目標は7.0%未満である。




以上



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2014年07月19日

血糖値について(3)

●血糖値について(3)

低血糖症の分類

低血糖症は、空腹時低血糖と食後低血糖に大きく分けられ、その分類法は診断に大いに有用である。


空腹時低血糖

症状 ウィップルの三徴(Whipple's triad)を呈する。

1.発作時低血糖(50mg/dL以下)

2.中枢神経症状を伴う低血糖発作

3.ブドウ糖の静脈注射による急速な回復

症状は、空腹・欠伸・悪心で始まり、倦怠感が強くなり、やがて発汗などの交感神経症状が現れる。

さらに低血糖が進行すると、異常行動が出現し、深昏睡に至る。



代表的な原因

糖尿病治療薬、ペンタミジン、キニーネなどによる薬剤性

副腎不全(副腎皮質ホルモン剤の急な中止など)

インスリン産生腫瘍(インスリノーマなど)

肝不全

重篤な慢性疾患(癌などなんでも) 肝細胞癌はそれそのものがインスリン様物質(IGF-II)を産生し、低血糖症の原因となることがある(腫瘍随伴症候群)

自己免疫性低血糖(インスリン・インスリン受容体・膵島β細胞に対する自己抗体による)



緊急対応 治療は緊急を要する。

糖質の多い飲食をさせたり、50%ブドウ糖液を20-40ml静注することで多くは回復する。

それでも意識が回復しない時は、ヒドロコルチゾンを静注。

それでもまだ意識が回復しない時は、マンニトールを静注する。

意識障害患者には、血糖を確認することなくCT検査をすることは禁忌である。



以上


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2014年07月16日

血糖値について(2)

●血糖値について(2)

●低血糖

極度に食事を摂らなかったり、糖尿病の薬を飲みすぎたり、特別な病気があると低血糖症を引き起こしやすい 。

また、これらの状態で激しい運動を行った時には、低血糖症がより起こりやすくなる。

清涼飲料水等を多飲するペットボトル症候群が進行して、糖尿病を発する患者が近年見られる[要出典]。

人体には低血糖に対し数段階の回避システムが用意されている。

1.血糖値が約80mg/dLを下回ると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極端に低下する。

2.約65-70mg/dLに低下すると、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン、アドレナリンが大量に放出され始める。

3.約60-65mg/dLに低下すると、三番目の血糖値を上げるホルモン、成長ホルモンが放出される。

4.最後に60mg/dLをきるようになると、最後の血糖値を上げるホルモン、コルチゾールの分泌が亢進する。




血糖値が50mg/dlを下回ると、大脳のエネルギー代謝が維持できなくなり、精神症状をおこしはじめ、さらには意識消失を引き起こし、重篤な場合は死に至る。

しかし上記のような回避システムが血糖値50mg/dLにいたるのを防いでいるため、通常は意識に異常をきたすには至らない。

そのかわりとして、アドレナリンが大量放出されることに伴い交感神経刺激症状があらわれる(低血糖発作の症状はこれによる)。

例としては、大量の冷や汗、動悸、振戦、譫妄などである。


アドレナリン、ノルアドレナリンによる諸症状として、精神症状は、にらんでいるような顔つきになり、暴力をふるったり、奇声をあげたりすることがある。


身体症状は心拍数や拍出量の増加、血糖と脂質の上昇、代謝の亢進、手足の冷え、呼吸が浅い、眼の奥が痛む、動悸、頻脈、狭心痛、手足の筋肉の痙攣、失神発作、月経前緊張症、手指の震えなどがある。

低血糖症の症状のなかでも、細胞のエネルギー不足で起こる症状は、異常な疲労感、日中でも眠気をもよおす、集中力欠如、めまい、ふらつき、健忘症、光過敏症、甘いもの欲求などがあげられる。


これらの低血糖回避メカニズムは、脳が低血糖状態を検出し、血糖を上げるホルモンを動員するよう命令することで開始される。

糖尿病治療中やインスリノーマなどの疾患で低血糖症を頻発すると、あまりに頻繁に低血糖状態を脳が検出するために、ある程度の低血糖症では回避システムが働かなくなってしまう。

より正確に言うと、脳内の低血糖を感知する領域では細胞外のグルコースをそのまま取り込むことによって血中グルコース濃度をGLUT1トランスポーターがモニターしており、低血糖を頻繁に起こすとこのGLUT1トランスポーターの転写が低下し調整不足をおこす。



50mg/dLをきっても発動しないようになると、低血糖発作をおこさないまま精神症状がはじまる。

10-20mg/dLをきっても発動しなくなると、低血糖発作をおこさないまま意識がなくなり死亡することもある。


逆に、管理がうまくいっていない糖尿病患者などにおいては、あまりに高血糖状態が続くため、100mg/dL前後のような普通は低血糖とはみなされないような濃度でも低血糖発作をおこしてしまう。

これは脳のGLUT1トランスポーターが調整過剰になっているためである。



治療としては基本的には血糖値が70mg/dl以下のときは40kcalほど摂取することが望ましいとされている。

経口摂取が可能な場合はブドウ糖10gやグルコレスキューを一袋、インタクト5個といった糖分補給を行う。

もちろん糖分を含む飲み物を摂取しても同じである。

意識障害があったり30mg/dl以下の低血糖や経口摂取が不可能な場合は点滴で即急に治療する。

5%ブドウ糖液50mlに50%ブドウ糖液20mlを混注して点滴投与する方法がよく知られている。

なお、飢餓などの場合により徐々にグルコース源が枯渇し低血糖となった場合、脂肪酸のβ酸化によるアセチルCoAから肝臓で生成されたケトン体が脳関門を通過することができ、脳関門通過後に再度アセチルCoAに戻されて脳細胞のミトコンドリアのTCAサイクルでエネルギーとして利用される。


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2014年07月07日

血糖値について

●血糖値について

血糖値(けっとうち、blood sugar concentration / blood glucose level)とは、血液内のグルコース(ブドウ糖)の濃度である。

健常なヒトの場合、空腹時血糖値はおおよそ80-100mg/dl程度であり、食後は若干高い値を示す。


ヒトの血糖値は、血糖値を下げるインスリン、血糖値をあげるグルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンといったホルモンにより、非常に狭い範囲の正常値に保たれている。

体内におけるグルコースはエネルギー源として重要である反面、高濃度のグルコースは糖化反応を引き起こし微小血管に障害を与え生体に有害であるため、インスリンなどによりその濃度(血糖)が常に一定範囲に保たれている。



●血糖調節メカニズム

血糖値は、通常の状態では血糖を下げるインスリンと血糖を上げるグルカゴンの作用によって調節されている。

食事後血糖値が上昇すると、グルコースはGLUT2トランスポーターまたはGLUT1トランスポーターを通って膵臓のランゲルハンス島β細胞に流入する。

グルコキナーゼ(膵β細胞と肝臓にしか発現しない)の作用によりグルコースがグルコース-6-リン酸になると、細胞内にカルシウムイオンの流入が起こりインスリンが放出される。

インスリンの血糖降下作用は三つの経路による。

インスリンは肝臓でのグリコーゲン合成を促進し、糖新生とグリコーゲン分解の双方を抑制する。

インスリンは骨格筋と脂肪組織でのグルコース取り込みを促進する(グルコーストランスポーターの動員による)。

脂肪細胞では取り込んだグルコースを中性脂肪に変換する。

インスリンは膵α細胞に入って直接グルカゴンの産生を抑制する。



●高血糖


血糖上昇に対する防御機構を、動物はほとんど備えていない。

たとえばヒトの場合、糖がたっぷりの清涼飲料水を毎日大量に飲むだけで容易に糖尿病性ケトアシドーシスのような重篤な疾患を起こしうる(ペットボトル症候群)。

血糖値が高くなったとき、それを調節するホルモンはインスリンだけである。

このたった一つの調節メカニズムが破綻した場合、糖尿病を発症することになる。

低血糖における四重の回避メカニズムとは対照的である。

破綻の仕方には二種類ある。

インスリンの分泌が低下した場合

インスリンは出ているものの、それによる血糖降下作用がうまくいかなくなった場合(インスリン抵抗性が出現している場合)



●尿糖

血糖値がおよそ180mg/dlを越えると、腎臓の尿細管でグルコースの再吸収が追いつかなくなり尿に排出されるようになる。

つまり尿糖は糖尿病の原因ではなく結果である。

例として、スクロース(ショ糖)180g程度以上を一度に摂取すると健常人であっても一過性の糖尿を生ずる。

これは食品成分表のコーラ・缶コーヒー等に示される量を基にすると2.5リットル前後(約1100kcal)に相当する。

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2014年07月03日

●糖尿病の治療

●糖尿病の治療

概要としては以下のとおりである。

糖尿病の治療は分類、または重症度(進行度)によって異なる。

1型糖尿病においては早期から強力なインスリン治療(強化インスリン療法や持続的インスリン皮下注射)を行う

2型糖尿病に対しては様々なパターンの治療が行われる。 まずは食事療法と運動療法が行われる。これによって血糖値が正常化するならそれで問題はない。

食事療法、運動療法で血糖値が正常化しない、もしくは最初から血糖値が高くてこれらの治療だけでは不十分と考えられるなら経口血糖降下薬あるいはGLP-1受容体作動薬を使用する

経口血糖降下薬あるいはGLP-1受容体作動薬でも血糖値が正常化しないならインスリン自己注射を開始する。

ただし、経口血糖降下剤を経由せず、当初からインスリン自己注射を行うという考え方も存在する。

袖状胃切除術や十二指腸スイッチといった外科手術により、肥満や2型糖尿病を治療することもある。




●糖尿病の歴史

歴史上の人物と糖尿病

古代中世の世界では糖尿病の根本原因はわからなかった。

しかし異常な喉の渇き、異常な頻尿がみられる症状を糖尿病の症状として正しく把握していた。

糖尿病に関しての最古の記録は紀元前1550年頃のエジプトのパピルスに書かれた「尿があまりにもたくさん出る病気」という記述である。



漢方の世界では「一斗ほどの水を飲み、一斗ほどの小便をする病=消渇病」という名前が糖尿病に与えられていた。

「消渇」とは「食べ物が体内で消える・体内を通過してしまう」という意味である。


古代ギリシャでも、「まるで魚のようにいつも水が必要になる病」として糖尿病がすでにとらえられていた。



中国史においては唐代に反乱を起こした安禄山(非常な肥満体型として知られる)が反乱の最中に失明などを引き起こしたのが糖尿病によるものではないかとする説がある。


また前漢の武帝も糖尿病を患ったが、八味地黄丸などの漢方薬の投与によって治癒したとされている。



漢方薬の世界では古代から消渇病=糖尿病に対して対処治療してきた蓄積があり、八味地黄丸、牛車腎気丸などの補腎薬が糖尿病に効果があるとされている。

これはこれら補腎薬が膵臓の機能を回復させる働きをもつためである。

また田七人参や朝鮮人参なども、血液を浄化し膵臓など内臓機能を回復させるため、漢方では糖尿病に効果があるとされてきた。



日本史上では藤原道長の晩年の健康状態を記した記録(藤原実資の日記「小右記」に見られる)が糖尿病の病態と酷似しており、糖尿病の日本での最古の記録に相当するのではないかと言われている。

また、道長の一族には「飲水」と呼ばれる病気が原因で死去するものが多かったと伝えられており、詳細は不明であるが患者はしばしば水を飲用したがる病状が見られるという記録からこれを糖尿病であると考えて、藤原摂関家には糖尿病の遺伝的要因があったのではとする学者もいる。


この当時、酒の醸造技術が未熟で、酒には大量のアルコールに変化していない糖が含まれていた。

日夜宴会に明け暮れ大量の飲酒の習慣を持ち、しかも糖質中心の食事、極度の運動不足な生活をおくる貴族は常に糖尿病の危険性に晒されていた。



織田信長やJ.S.バッハ等も当時の文献に残された症状から、糖尿病だったのではないかと言われている。


ちなみに信長は肥満体型ではなかったが、かなりの甘党であった。

記録によると晩年の信長は喉渇と頻尿、さらに糖尿病由来と思われる神経痛に苦しめられていた。


エジソン、セザンヌ、バルザックなども糖尿病に罹患していた可能性が高い。

近代日本においては明治天皇が、糖尿病の悪化と併発した尿毒症で崩御したことが知られている。

明治天皇も信長と同様、肥満体型ではなかったが甘党であった。

政治家では田中角栄、大平正芳、芸能人では山城新伍、根上淳、村田英雄などが糖尿病罹患者として知られている。


以上

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2014年07月01日

糖尿病の検査

●糖尿病の検査

糖尿病の診断や治療効果判定のためには血液検査のほかに様々な検査を行う。また慢性期合併症の治療目的で行われることもある。

耐糖能異常検出マーカーとしてのイノシトール

イノシトール(myo-イノシトール)はグルコースと類似の構造を持つ糖アルコールであり、ホスファチジルイノシトールを加水分解することで得られるインスリンメッセンジャーである。

イノシトールは、通常糸球体より排泄され、尿細管で再吸収されるが、高血糖状態においては、グルコースと競合するため、再吸収されず尿中排泄量が増加する。

その結果、体内のイノシトール量が低下し、ポリオール代謝異常によって、神経症の成因となる。



●糖尿病の診断

日本では、日本糖尿病学会が2010年7月より新しい診断基準を施行した。(従来の診断基準は1999年に施行されたもの)

新基準では、血糖値だけでなくヘモグロビンA1c(HbA1c)の基準も設けられた。

血糖値(空腹時血糖値、75gOGTT2時間後血糖値、随時血糖値)及びHbA1cの検査結果で判定を行う。



一回目の判定で糖尿病と診断されるケース血糖値とHbA1cがともに糖尿病型だった場合

血糖値のみが糖尿病型であり、口渇や多飲、多尿など糖尿病の典型症状や糖尿病性網膜症がみられる場合

二回目の判定で糖尿病と診断されるケース一回目では血糖値のみが糖尿病型。二回目で血糖値、HbA1cのいずれか(若しくは両方)が糖尿病型だった場合

一回目ではHbA1cのみが糖尿病型。二回目で血糖値が糖尿病型だった場合


血糖値、

HbA1cのいずれかが糖尿病型だったにもかかわらず、上記以外ケースで糖尿病と診断にいたらなかった場合は「糖尿病疑い」とされる。

糖尿病疑いの人は3〜6か月以内の再検査が推奨され、その時点で再度判定することになる。



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